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杉と竹 アーカイブ

2006年04月24日

杉樽材に蟻の道がある

杉樽を裏返したところです。
黒っぽい部分に二本の縦線が見えます。
これは不良品で、「蟻道(ぎどう)」と呼び、ここから水分が漏れます。

この黒い線は本当に蟻が通った跡だと思っていましたが、実はこの年輪の年に何か大きな雷や地震など、気象に大きな異変があった証拠なのです。

因みに台風で杉の木が大きく揺れた時には「うて」と言って、今度は横に罅(ひび)が入ってしまいます。
「うて」は杉樽の材料としては致命的でタガを締めると木は折れてしまいます。
建築材として使う時には支障はありません。

この他、「陽疾(あて)」といって岩石等が多い山で育った木は杉材も地質に負けないように硬くなってしまいます。これも杉樽材には不向きです。
樽職人の間の隠語で「あて」というのは酒の肴の事ではなく、悪いことの謂(い)いに用いられています。

こうした材料の選択も親方の重要な仕事のひとつなのです。

2006年06月15日

樽(たる)と桶(おけ)の違い

 

左が板目、右が柾目です。(箍も、ふたつとも桶特有の「組輪」です。左右、組み方が異なります)

樽(たる)と桶(おけ)の違いを解かりやすく書くと、桶(おけ)に蓋が付いた物が樽(たる)です。
見た目は似ていますが工程が全く違います。又、基本的に桶(おけ)は柾目で、樽(たる)は板目で作ります。但し、例外もあります。

樽(たる)にせよ桶(おけ)にせよ永く容器として使う物には必ず板目を使います。
柾目を使う物は「おひつ」や「寿司桶」のように短時間使う物に限られます。
漬物樽(つけものたる)や味噌樽(みそたる)には板目の方が向いています。
なぜなら、柾目は木目を通じて水分が滲み出てしまうからです。

写真は100年物の杉を割った所。
白墨に合わせて縦ないし横にまっすぐに割った物が柾目。
木目にそって、外側から中心に向かって割った物が板目です。
建築材と違って、木目が通っていないと漏れの原因になるので、機械で製材せず、刃物で割ります。
柾目の方がはるかに高価になります。
一度限りの使い捨てが原則である酒樽(さかだる)には板目を用います。

これは、柾目の桶(おけ)ですが、表面を化学物質でコーティングしてあるので、一見きれいです。
又、漏れもありませんが、ニス状の物が木の呼吸を妨げてしまうので、これではプラスチック容器と大差ありません。「たるや竹十」の樽は裏表共、コーティングはしていません。

又、桧(ヒノキ)の樽(たる)や桶(おけ)は、その香りが強すぎて食物には向いていません。

昔から、漬物樽(つけものたる)や味噌樽(みそたる)あるいは清酒の醸造には板目の吉野杉が最もふさわしいと言われております。

2006年06月16日

杉樽(たる)のトラブル

漬物樽(つけものたる)や樽太鼓(たるたいこ)を作る時は先ず杉材の選別から始めます。
山から届く杉材の中には、稀に、不適切なものが混入していることもあります。

写真は「目まわり」といって、樽に不適切な材料のひとつです。
↓夏目(白い部分)が硬い冬目(赤い部分)に負けて、木目にそって二枚に割れてしまった状態です。

↑こうなってしまう杉材を見分けないといけません。つくる前に発見されていれば、被害は最小限で済みます。

↑漬物樽(つけものたる)は蓋がないので、酒樽よりも材料の角度を正確に削らなければなりません。これは側材の木目が割れた例です。

↑これは酒樽の例ですが、全工程を終えて、蓋をこめてタガを締めた途端、木目が割れました。
波打っている部分です。
漏れる訳ではありませんが、また蓋を取り替えねばなりません。

1000丁にひとつはこういったトラブルに遭遇します。

投稿者 diva : 01:30 | コメント (2)

2006年06月17日

杉樽(たる)に巻く竹

樽には箍(タガ)に真竹を用います。真竹は細工がし易いのです。
孟宗竹を使う事も稀にありますが、硬くて加工が困難です。

竹を伐り出すにも季節を選びます。
一年中、山から竹を伐ってくる事は出来ないのです。

春から初秋の間に伐った竹には虫が付き易いと云われています。
真冬に一年分の竹を伐採し、写真のように備蓄して置かねばなりません。


竹の加工作業は地面に穴を掘り、そこに四斗樽を埋め込んだ作業場に人間がもぐりこんで行います。
樽屋も子供の頃、この穴のなかで、よく遊んで叱られたものです。

投稿者 diva : 10:42 | コメント (0)

2006年06月20日

杉樽の基本、樽丸(たるまる)


上の写真のうち、竹の箍(タガ)で巻いた古いものが文字通り「樽丸」。
山では一丸(ひとまる)に同分量の杉材を入れて巻き上げなければなりません。
杉の原産地、吉野地方には、昔は樽丸の結束だけを専門とする職人がいた程です。

現在はこれを二分割して、写真の左の様にビニールで結束しているので、味気なくなりました。

樽屋が「丸(まる)」と呼ぶものは杉樽を作るときに最も重要な部材で、正確には「樽丸」と言います。昔は上の写真、右下のように、丸く束ねて運送していたからです。

一枚ずつは側(かわ)、または榑(くれ)と呼びます。

立っている五枚の側(かわ)のうち、右から三枚目の物が甲付側、酒樽に使います。
江戸時代から戦前までは酒樽といえば甲付に限りました。
赤味側は醤油樽用でした。
しかし昭和30年代の醤油樽の廃止に伴い、行き場を失った赤味側の用途を巡って酒造組合と製樽組合が協議の結果、甲付側を特級酒(今の特撰)用に、醤油用であった赤味側を清酒の一級と二級(今の上撰、佳撰)に使用することになりました。

写真右から二枚目が、その赤味側です。
左の二枚が白太です。見た目はきれいなのですが水分を漏らす性質を持っているので樽太鼓や展示用の樽に使います。
赤味側の中でも「あく」が出て色が黒くなった物を黒側と呼び、漬物樽や味噌樽に使います。
漬物樽や味噌樽に甲付樽を使うことはありません。長持ちしないからです。
漬物樽や味噌樽のように長期にわたって使用する物には最上の甲付といえども適材とは言えません。

一番右側は、赤味側と黒側の中間に位置する物で中赤と呼びます。
黒丸(黒側)は名の通り、更に黒い物です。色は悪くても、最も丈夫で、値段が安いため最近ではこの二種類の材料も清酒樽に使われるようになり、清酒樽の材料も昔ほど厳密ではなくなってしまいました。

樽を菰で巻く昔の習慣が災いして、外から見えない杉樽の品質が日に日に安かろう悪かろうという傾向に変化しています。残念なことです。
酒樽には、やはり甲付樽、若しくは上質の赤味樽を使っていただきたいものです。

樽屋としては、菰を廃止して、杉樽そのものを皆さんに見て頂きたいと常々思っております。

左端の太い物は一番外側で木皮(こわ)又は「やせ」と言い、柾目に割って「寿司桶」などに使います。
一番左で横になっている物は更に外側の杉皮です。数奇屋の屋根や塀に用います。

2007年07月19日

吉野杉の酒樽と杉箸

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酒樽に使う最適の材料として開発されたものが吉野杉です。杉製品として酒樽と杉箸は助け合って発展してきました。
現在では吉野杉といえば高級建築材だと思われる率の方が高くなっていますが。

酒樽、杉箸のどちらに使っても辺材は生まれます。
この辺材の白い部分を捨てるのは勿体ない、何かに利用できないかと考えた末、出来たのが奈良県吉野郡特産の杉箸です。

これらは、山の手入れによって出た間伐材や、焼却せざるを得ない不要な部分を利用しているのであって、決して、過剰な伐採によるものではありません。

一時、エコロジーという名のもと「割り箸は無駄」と言われ、目の敵にされて、美しい箸を作っていた吉野地方の多くの箸業者が廃業に追い込まれました。

むしろ、問題なのは現在、日本向けに行なわれている東南アジアや中国の大規模な森林伐採です。
これは明らかに環境破壊であって、現地では事実多くの自然災害を引き起こして問題になっています。
今頃になって事態を重く見た中国政府は来年から日本への輸出を禁止するのだそうです。

今、日本の市場に出回っている割り箸の多くがこれらの国からの輸入製品です。
これらの産業によって、現地の人々の生活が潤っている訳ですが、台風などの災害の際に被害者になるのはいつも現場で働いている貧しい人々です。
しかも、神経質なほど清潔好きである日本人向けに雑木を漂白までしています。
食堂の割り箸が異常に白く、奇妙な味がするのは現地での薬品処理によるものなのです。

食べ物を口に橋渡しする物が「箸」です。最も重要な食器です。
一度、吉野の杉箸を使ってみて下さい。食べ物の味が全く違うことを理解してもらえると思います。
吉野杉の割り箸は決して特別な物ではありません。一膳5円位から販売しています。

上の写真、上から「天削」、次が高級品の「利休箸」、一番下が我々が日頃よく目にする輸入品です。

明日のテレビ番組で「箸」はどんな風に紹介されるのか不安ながら楽しみです。
多分、田中淳夫氏著『割り箸はもったいない?』(ちくま新書)をヒントにするんじゃないかと樽屋は思っているのですが・・・

2008年01月19日

樽丸(たるまる)製作技術が文化財に指定された

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酒樽に使う材料である吉野地方の樽丸(たるまる)の製作技術が一月十八日に重要無形民俗文化財に指定されました。
二紙に詳しいので記事を紹介しておきます。


 奈良県吉野地方で伝承されている樽丸(たるまる)の製作技術について、国の文化審議会は18日、重要無形民俗文化財に指定するよう答申した。吉野杉の特性を生かしながら酒樽の用材を作る貴重な加工技術で、芸能ではなく伝統的な製作技術が重要無形民俗文化財に指定されるのは、県内では初めての例となる。
産経ニュースより 2008年1月19日


 樽丸は、側板を作り、それらを丸めて竹の輪などで一定量束ねた用材。吉野地方では江戸時代中期に、兵庫県の灘や伊丹などで使われる酒樽のために製作が始まった。きめ細かな年輪と香りを持つ吉野杉の特徴を生かし、最盛期の江戸時代後期~明治時代には吉野林業を代表する生産品となり、割りばしの製作技術も派生したという。

 現在は「吉野の樽丸製作技術保存会」(栗山晴昇会長)の職人14人が技術を伝える。木材を割ったり削ったりする基本的な技術だが、6つに分かれる工程では、木材の特性を知る熟練した技が求められるという

国の文化審議会は18日、吉野川の上流地域に伝わる「吉野の樽丸(たるまる)製作技術」を、重要無形民俗文化財として指定するよう文部科学大臣に答申した。県内の同文化財は6件目となる。

 「樽丸」は、吉野杉から作った「クレ」と呼ばれる酒だるの側面の板を、運搬のために竹の輪の中に詰め込んだ束のこと。

 江戸時代中期に始まったとされ、きめ細かな年輪と香りの良さが好まれ、酒造が盛んだった灘や伊丹などに向け出荷されていた。吉野の林業そのものが「樽丸林業」と呼ばれていた時期もある。林産加工技術としての重要さが評価された。

 現在も川上村、吉野町、黒滝村、下市町で受け継がれ、地元の「吉野の樽丸製作技術保存会」が保護、継承に努めている。【花澤茂人】
毎日新聞(奈良版)より 2008年1月19日


数年前に樽丸を作る道具が文化財に指定された事に次ぐものですが、これらを使う酒樽の存在を忘れているようなので、「樽丸製作技術保存会」でも酒樽の製作技術についても目を向けてくれるように文化庁に懇願するそうです。

2008年10月06日

大きな樽(タル)の大きな輪

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これは樽(タル)用ではなく、桶(オケ)用です。
三尺桶の組輪です。

大きな方の直径が4尺6寸(約140センチ)、細い方で3尺6寸(約110センチ)もあります。
古い桶から輪替えのために外したので、色が褪せています。
一緒に写っている青くて小さい輪は6尺(約18センチ)輪ですから、醸造用の桶がいかに大きい物か判るでしょう。

更に大きな直径7尺6寸(約230センチ)程のものもありますし、手のひらに乗る程小さい桶には当然もっと径の小さい箍(タガ)が入ります。
そのような小型のものを「源氏もの」と呼びます。
いずれも樽屋ではなく、桶師の仕事です。

桶(オケ)では箍(タガ)の組み方が「組輪(くみわ)」と言う、酒だるには使わない複雑で幾分装飾的なものをしばしば使います。
樽(タル)の箍(タガ)より肉薄の竹を二本や三本を結っていく全く違った巻き方をします。

桶(オケ)の場合は本体自体で独立していて、もし箍(タガ)が外れても分解することはありませんから多少、飾りのような要素もありますけれど、樽(タル)の場合は肉厚の丈夫な箍(タガ)が本体を支えているので、箍(タガ)が外れると樽(タル)はバラバラになってしまいます。

風が吹いたら儲かるのは、実は桶屋ではなく、樽屋の筈なのですが、
ここのところ、風の強い日が続いているのに、樽屋が少しも儲からないのは何故でしょう。

2008年11月11日

酒樽屋の前に並ぶ末竹

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酒樽(さかだる)の箍(タガ)には竹の中でも真竹のみを使います。
細工しやすく、かつ強度があるからです。

根元の部分「もと」と写真の先の部分「すえ」は切断します。
それらを使って竹杓や取手、竹釘、ささら、等を作り、残りは消却します。

何故か竹は材木より火力が強いので、冬は自宅のストーブに投げ込んで暖房用に使い、
夏は友人のピザ屋さんが軽トラックで取りにやって来てイタリア食材と交換します。

たるや 竹十

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